心理的安全性とは?高め方と測り方|明日からできる7つの実践
心理的安全性は「仲良しの職場」でも「衝突のない職場」でもなく、質問・反対・失敗の報告といった対人リスクのある行動を安心して取れる状態のことです。定義の誤解をほどき、7つの設問による測り方と、マネージャー・人事が明日から実践できる高め方を整理しました。
この記事の要点
- 心理的安全性とは「対人リスクを取っても罰されないという信念」。基準の低さや仲の良さとは別物です。
- 測り方はエドモンドソンの7設問が基本。匿名サーベイでチーム単位に定点観測すると変化を捉えられます。
- 高める起点はリーダーの行動。「わからない」と言う、失敗の共有を称賛する、発言機会を設計することが核になります。
- 効き方は組織タイプ(率直重視か調和重視か)によって変わるため、まず自社の現在地を把握するのが近道です。
心理的安全性とは
心理的安全性(psychological safety)とは、「このチームでは、対人リスクを取っても罰されたり評価を下げられたりしない」とメンバーが信じられる状態のことです。ハーバード・ビジネススクールのエイミー・エドモンドソン教授が1999年に提唱し、Googleが自社の生産性研究「プロジェクト・アリストテレス」で「成果の高いチームに共通する最重要因子」として挙げたことで広く知られるようになりました。
ここでいう「対人リスクのある行動」とは、具体的には次のようなものです。
- 「初歩的なことかもしれませんが」と質問する
- 上司や多数派の意見に反対意見を言う
- 自分のミスや失敗を報告する
- 「わからないので助けてほしい」と言う
- まだ粗いアイデアを提案する
これらは、言った本人が「無知だ」「面倒だ」「能力が低い」と思われる可能性のある行動です。心理的安全性が高い職場では、こうした行動が日常的に起こり、問題が早く表面化し、学習が速く回ります。
よくある誤解:「ぬるい職場」とは違う
心理的安全性はしばしば「優しい職場」「怒られない職場」と誤解されますが、本質は逆です。心理的安全性は基準を下げることではなく、率直さへの安心を上げることです。エドモンドソン教授は「基準の高さ」と「心理的安全性」の2軸でチームを整理しています。
| 心理的安全性が低い | 心理的安全性が高い | |
|---|---|---|
| 基準が高い | 不安ゾーン:挑戦や報告を避け、問題が隠れる | 学習ゾーン:率直に議論し、成果と学習が両立する |
| 基準が低い | 無関心ゾーン:意見も挑戦も出ない | 快適ゾーン:仲は良いが成長しない「ぬるま湯」 |
目指すのは右上の「学習ゾーン」です。「厳しいフィードバックをしない」ことではなく、「厳しいフィードバックを安心してやり取りできる」ことが心理的安全性の高い状態です。
なぜ重要か:離職・品質・イノベーションに直結する
心理的安全性が低い組織で起きることは共通しています。悪い情報ほど上がってこなくなることです。
- 問題の発見が遅れる:ミスや懸念が報告されず、顧客クレームや障害になって初めて表面化する。
- 離職の予兆を掴めない:不満や停滞感を口にできないため、退職の申し出が「突然」に見える。
- 会議が形骸化する:その場では異論が出ず、会議の後の雑談や個別チャットで本音が語られる。
- 挑戦が減る:失敗が個人の責任として扱われるため、確実にできることしかやらなくなる。
逆に言えば、心理的安全性への投資は、離職防止・品質改善・イノベーションへの投資と同じ方向を向いています。離職との関係は離職前に行動データが変わる理由でも詳しく扱っています。
測り方:エドモンドソンの7つの設問
心理的安全性は雰囲気ではなく、設問で測定できます。エドモンドソン教授の研究で用いられた7項目を、そのままサーベイに使えます。各項目に「まったくそう思わない〜強くそう思う」の5段階で回答してもらいます(R印は逆転項目:スコアを反転して集計します)。
- このチームでミスをすると、たいてい責められる。(R)
- このチームでは、困難な問題や課題を率直に指摘し合える。
- このチームの人は、自分と違うやり方や考え方を受け入れない。(R)
- このチームでは、安心してリスクのある行動を取れる。
- このチームの人には、助けを求めにくい。(R)
- このチームには、私の努力を故意に台無しにする人はいない。
- このチームでは、私のスキルと才能が尊重され、活かされている。
運用のポイントは3つです。①匿名で取る(記名式では正直に答えられず、それ自体が心理的安全性の欠如を映します)、②チーム単位で見る(全社平均は変化を隠します)、③1回で判断せず推移で見る(施策の前後比較ができて初めて意味を持ちます)。
高め方:明日からできる7つの実践
心理的安全性は「高めよう」と呼びかけて高まるものではなく、リーダーの行動と会議・1on1の運用を変えることで積み上がります。効果が出やすい順に7つ挙げます。
- 1. リーダーが先に弱さを見せる:「ここは私もわからない」「先週の判断は間違いだった」とリーダーが口にすることが、メンバーの発言のハードルを最も下げます。完璧なリーダーの下では誰も失敗を報告できません。
- 2. 質問で返す回数を増やす:報告に対して即座に評価や指示で返すのではなく、「どう考えている?」「何があれば進められる?」と質問で返す。発言が「ジャッジされる場」から「考えを深める場」に変わります。
- 3. 失敗の報告を称賛する:ミスの報告が上がったら、まず「早く共有してくれて助かった」と応じ、原因究明を個人ではなく仕組みに向けます。最初の1回の反応が、その後の報告文化を決めます。
- 4. 会議で発言機会を設計する:声の大きい人だけが話す会議を放置しない。議題を事前共有して考える時間を作る、順番に意見を聞く、あえて反対意見を出す役を置く、といった設計で「発言のきっかけ」を仕組みにします。
- 5. 1on1で業務以外の障害を聞く:進捗確認だけの1on1は心理的安全性に寄与しません。「言いにくいことで、気になっていることはある?」と定期的に聞く場があること自体が安全のシグナルになります。1on1の進め方は1on1の質問例・アジェンダ集に整理しています。
- 6. 感謝と承認を流通させる:貢献が見えて承認される環境では、発言・挑戦のリスクが相対的に下がります。称賛が特定の人に偏っていないかも定期的に確認します。
- 7. 発言の結果を放置しない:勇気を出して挙げられた懸念や提案が、その後どうなったかを必ずフィードバックする。「言っても何も変わらない」経験は、心理的安全性を最も速く毀損します。
組織タイプによって「効く打ち手」は変わる
同じ施策でも、組織のカルチャーによって効き方は変わります。たとえば率直なコミュニケーションを重視する組織では、意見はすでに出やすい一方、強い意見を持つ人の発言が他のメンバーの発言を抑えていないかに注意が必要です。調和を重視する組織では、表立った衝突は少なくても、異論が水面下に沈みやすく、匿名サーベイと1on1での吸い上げがより重要になります。
打ち手を選ぶ前に、自社が「意思決定・成果と評価・リスク・伝え方」の4軸でどんなタイプかを把握しておくと、施策の優先順位を間違えにくくなります。詳しくは組織タイプ16分類の完全ガイドをご覧ください。
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定点観測を仕組みにする
心理的安全性は一度高めて終わりではなく、組織変更・増員・マネージャー交代のたびに揺らぎます。年1回の大規模サーベイでは変化に気づくのが遅すぎるため、短いパルスサーベイに7設問(または抜粋)を組み込み、チーム単位で月次の推移を見る運用が現実的です。スコアが下がったチームには、原因の詮索ではなく「何があれば話しやすくなるか」を聞く対話をセットにします。
ChordOneは、パルスサーベイ・1on1の記録・称賛・従業員情報を同じワークスペースでつなぎ、チームごとのコンディション変化を早期に捉えることを支援します。パルスサーベイ機能は従業員20名まで無料で始められます。
よくある質問
心理的安全性とは何ですか?
チームの中で質問・反対・失敗の報告・助けの要請といった対人リスクのある行動を取っても、罰されたり評価を下げられたりしないと信じられる状態のことです。エイミー・エドモンドソン教授が提唱した概念で、「仲が良い」こととは異なります。
心理的安全性はどうやって測りますか?
エドモンドソンの7つの設問に5段階で回答してもらう方法が一般的です。匿名のパルスサーベイに組み込み、チーム単位で推移を定点観測します。
高めるには何から始めるべきですか?
リーダー自身が「わからない」「間違えた」を口にすることが最も効果的です。そのうえで、会議の発言設計、1on1での吸い上げ、失敗報告への反応の仕方を仕組みとして整えます。
「ぬるい職場」になりませんか?
なりません。心理的安全性は基準を下げることではなく、高い基準のもとで率直にやり取りできる安心を作ることです。基準が高く安全性も高い「学習ゾーン」を目指します。
20人まで無料で、コンディションの定点観測を始められます
記事で紹介した7設問を、ChordOneのパルスサーベイでそのまま運用できます。料金の目安は料金シミュレータで確認できます。
編集部メモ
本記事の定義・設問はエイミー・エドモンドソン教授の研究(1999年)およびGoogleのプロジェクト・アリストテレスの公開情報をもとに整理しました。7設問の訳文は実務で使いやすい表現に編集部で調整しています。サーベイに組み込む際は、自社の言葉遣いに合わせて微調整することをおすすめします。
関連情報
- 組織タイプ16分類の完全ガイド
4軸16タイプで自社のカルチャーを把握する方法。
- 1on1の質問例・アジェンダ集
心理的安全性を高める1on1の具体的な進め方。
- ChordOneのパルスサーベイ機能
7設問を組み込んだ定点観測の始め方。